2024年4月1日に何が変わったか

障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25年法律第65号、以下「障害者差別解消法」)は令和3年に改正され(令和3年法律第56号)、改正法は令和6年(2024年)4月1日に施行されました(内閣府)。政府広報オンラインは、この改正で事業者による障害のある人への「合理的配慮の提供」が義務化されたと案内しています。

改正後の第8条第2項は、事業者は障害者から「現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないとき」は、必要かつ合理的な配慮を「しなければならない」と定めています。

条文で読む「義務」と「努力義務」

区分根拠条文上の書きぶりWebでの例(基本方針の例示から)
不当な差別的取扱いの禁止第8条第1項障害を理由として不当な差別的取扱いをすることにより権利利益を侵害して「はならない」正当な理由なく、障害を理由にサービス提供を拒否するなど
合理的配慮の提供(事業者)第8条第2項意思の表明があり、負担が過重でないときは「しなければならない」ウェブサイトの手続が利用しづらいと申出を受け、電話やメールで手続を支援する
環境の整備第5条施設の構造の改善、設備の整備、関係職員への研修その他の必要な環境の整備に「努めなければならない」以後同じ困りごとが起きないよう、ウェブサイトそのものを改良する

令和5年3月14日に閣議決定された基本方針は、不特定多数の障害者を対象に事前に行う改善措置を「環境の整備として行政機関等及び事業者の努力義務としている」と明記し、その例として「障害者による円滑な情報の取得・利用・発信のための情報アクセシビリティの向上等」を挙げています。

押さえておきたい点:障害者差別解消法の条文には、WCAGやJIS X 8341-3への適合を義務づける規定はありません。Webサイトをあらかじめアクセシブルにすることは「環境の整備」として努力義務に位置づけられ、義務化されたのは個別の申出に対する合理的配慮の提供です。

基本方針に書かれたウェブサイトの例

基本方針は合理的配慮と環境の整備の関係を説明する例として、オンラインでの申込手続が必要な場合に「手続を行うためのウェブサイトが障害者にとって利用しづらいものとなっていることから、手続に際しての支援を求める」申出を受けたケースを挙げています。この例では、

  • 申出をした人に対し、電話やメールでの対応を行う……合理的配慮の提供
  • 以後、障害者が同様の申込手続で困らないよう、ウェブサイトの改良を行う……環境の整備

と整理されています。つまりWebサイトの改善は、合理的配慮を個別に行う負担を減らし、より多くの利用者に先回りして届ける土台です。基本方針も「環境の整備と合理的配慮の提供を両輪として進めることが重要」としています。

また基本方針は、合理的配慮の提供義務に反すると考えられる例として、電話利用が困難な障害者から電話以外の手段で手続ができるよう求められた場合に、メールや電話リレーサービスを介した電話等の代替措置を検討せずに断ることを挙げています。問い合わせ窓口を電話だけにしているサイトは、代替手段を用意しておくと申出への対応がしやすくなります。

「過重な負担」と建設的対話

合理的配慮は、負担が過重でない範囲で、個別の状況に応じて行うものです。基本方針は過重な負担の判断要素として、事務・事業への影響の程度、実現可能性の程度(物理的・技術的制約、人的・体制上の制約)、費用・負担の程度、事務・事業規模、財政・財務状況を挙げ、個別の事案ごとに具体的場面や状況に応じて総合的・客観的に判断するとしています。

申出の内容どおりの対応が難しい場合でも、すぐに断るのではなく、双方の「建設的対話」による相互理解を通じて代わりの方法を検討することが求められています。対応の流れはWebサイト経由で合理的配慮の申出を受けたときの対応手順で整理しています。

Web担当者が誤解しやすい3つの表現

「法律でWCAG(JIS)準拠が義務になった」
条文にそのような規定はありません。社内で説明するときは「合理的配慮の提供が義務化され、Webの事前改善は環境の整備(努力義務)にあたる」と分けて伝えると正確です。
「努力義務だから何もしなくてよい」
基本方針は環境の整備と合理的配慮を両輪とし、環境の整備の状況によって合理的配慮の内容が変わるとしています。Webが使いにくいほど個別対応の件数は増えやすくなります。
「アクセシビリティ対応済みなら申出に応じなくてよい」
合理的配慮は個々の状況に応じて行う措置です。規格への適合を確認したサイトでも、個別の申出には別途対応を検討します。

相談先・申込先の選び方

法律の解釈や個別事案の判断に迷うときは、まず所管の省庁や自治体の窓口に確認してください。内閣府は、障害者差別に関する相談を適切な自治体・各省庁等の窓口につなぐ「つなぐ窓口」を案内しています。最新の受付方法は内閣府のページで確認できます。

Webサイトの改善(環境の整備)を外部に依頼する場合は、規格の版・達成等級・対象ページを先に決めておくと見積もりを比べやすくなります。自社チェックと外部診断の違い、診断サービスの選び方もあわせてご覧ください。

この記事は法令と政府資料の記載を紹介するものです。個別の事案が法律上どう扱われるかは、所管省庁の窓口や弁護士などの専門家にご確認ください。

出典・確認日

確認日:2026年10月12日/参照した公式・一次情報 6件